ドバイは、給与に対する個人所得税がない国として知られています。ただし、買い物にはVATがあり、事業には法人税や税務登録のルールがあります。生活上の違反で支払う罰金も、税金とは別に発生します。「所得税がない」「何でも経費になる」「海外への支払いならVATもない」は、それぞれ違う話です。 1・2
この記事では、ドバイで暮らす人や事業を始める人に向けて、税金の基本から国外仕入れのVAT、罰金の会計処理、日常のルールまでをまとめます。金額はAED(UAEディルハム)で示し、税率がかかる対象も分けて説明します。
要点|給与の所得税、事業の法人税、買い物のVAT、違反に対する罰金は別々に管理します。 税金が軽い環境を活かすには、税率だけでなく、登録・帳簿・契約・生活上のルールまで整えることが大切です。
ドバイの「税金がない」は、どこまで正しい?
UAE政府は、個人に所得税を課していないと説明しています。一方、物品やサービスには原則5%のVATがかかり、法人や一定の個人事業には法人税が適用されます。まずは、何に対する負担かを確認しましょう。 1・2・3
| 区分 | 基本的な扱い | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 給与 | UAEの個人所得税はなし | 日本側の税務上の居住者判定とは別 |
| 通常の法人税 | 課税所得375,000AEDまで0%、超過部分9% | 基準は売上ではなく課税所得 |
| 個人の事業 | UAE事業の暦年売上が1,000,000AED超なら法人税の対象 | 給与・定義に該当する個人投資所得などは除外 |
| VAT | 標準税率5% | 0%課税・免税・対象外と仕入控除は別の区分 |
| 罰金・行政ペナルティ | 違反の内容に応じて発生 | 通常、法人税の計算で損金にできない |
個人事業の1,000,000AED基準と、通常法人税の375,000AED基準は同じ数字ではありません。前者は法人税の対象になるかを判断する事業売上、後者は通常税率を計算する課税所得です。 個人の給与や、制度上の定義に該当する個人投資・個人不動産投資所得は、自然人の法人税対象となる事業から除外されます。 3
フリーゾーンに会社を作れば、すべての利益が自動で0%になるわけでもありません。適格フリーゾーン法人(QFZP)の適格所得に対する0%には、実体や活動内容などの条件があります。フリーゾーンの法人税優遇とVATは別制度なので、一方の優遇だけで他方を判断しないようにします。 4
法人税9%は、利益全体にかかるとは限らない
通常税率では、課税所得のうち375,000AEDを超える部分に9%がかかります。課税所得500,000AEDなら、税額は次の計算です。 2
計算式|(500,000 − 375,000)×9%=11,250AED。 課税所得全体に9%をかけた45,000AEDではありません。
| 課税所得 | 9%がかかる部分 | 通常法人税の計算額 |
|---|---|---|
| 300,000AED | 0AED | 0AED |
| 375,000AED | 0AED | 0AED |
| 500,000AED | 125,000AED | 11,250AED |
| 1,000,000AED | 625,000AED | 56,250AED |
表は通常税率を使った単純比較です。小規模事業者軽減措置などの特例、損失控除、税額控除、QFZPや大規模多国籍企業向け制度は反映していません。また、会計上の利益に税務調整を行うため、決算書の利益がそのまま課税所得になるとは限りません。
国外からの仕入れにVATはかからない?
国外の会社から買ったという理由だけで、UAEのVATがなくなるわけではありません。 海外サービスと輸入物品を分け、UAE側で誰が税額を申告するのかを整理する必要があります。 5・6
海外SaaS・外注サービスはリバースチャージを確認
UAEのVAT登録事業者が国外の非居住供給者からサービスを受け、UAEで課税される取引に該当する場合、通常はリバースチャージが問題になります。これは、国外の売り手ではなく、UAE側の買い手がVATを計算・申告する仕組みです。 5・6
たとえば、UAEのVAT登録会社が、自社の課税売上に使う海外SaaSを10,000AEDで購入したとします。標準税率5%なら、500AEDをリバースチャージの税額として計上します。仕入控除の要件を満たせば、同じ500AEDを控除でき、当該取引の差引VATが0AEDになることがあります。

注意|差引0AEDになることと、取引が非課税で申告不要なことは同じではありません。 私的な利用、免税売上に対応する利用、控除できない支出などでは、同額を全額控除できるとは限りません。
この例は、UAEで標準税率の対象となるサービスを、登録事業者が全額控除できる条件で購入した場合です。個人が海外通販やアプリを買う場合の説明ではありません。国外供給者の請求書や同等の書類、サービスの内容、事業での利用目的を残します。取引条件に応じた仕入先・取引の確認も、控除の管理に含めます。 6・7
輸入物品は、サービスとは違う通関の流れがある
海外から物品を輸入する場合は、通関時の輸入VATや、VAT登録と税関登録の連携を確認します。税関からの情報を申告に反映する流れがあり、海外役務のリバースチャージだけで処理を済ませるものではありません。課税売上向けの輸入で控除要件を満たせば、輸入VATを控除できる場合があります。 5
| 国外への支払い | まず確認すること | 残す書類 |
|---|---|---|
| 海外サービス | 供給地、リバースチャージ、控除の可否 | 請求書・契約・サービス内容・事業利用の記録 |
| 輸入物品 | 通関、輸入VAT、税関情報と申告の一致 | 商業インボイス・通関申告・輸入VATの記録 |
国外仕入れのVATは、支払先の国だけでなく、取引内容とUAE側の立場で決まります。ここを整理しておくと、税額の二重計上や控除漏れを避けやすくなります。
VATの登録基準と申告期限も別に管理する
UAEの居住事業者は、原則として課税供給と輸入の合計が過去12か月で375,000AEDを超える場合、または次の30日で超える見込みの場合にVAT登録が必要です。国外事業者には、この金額基準をそのまま当てはめない扱いがあります。 8
登録後のVAT申告・納付は通常、課税期間終了後28日以内です。売上、利益、VAT登録基準、申告期限を一つの数字で管理しないことが重要です。 5
罰金は「会社で払えば経費」にならない
ドバイの生活ルールは、単なるマナーだけではありません。交通機関の規則や法律に違反すると、税金とは別に支払いが発生します。さらに、会社が罰金を負担した場合には、法人税の処理にも注意が必要です。
UAE法人税法33条は、原則として罰金・ペナルティを損金不算入としています。会計帳簿で費用に計上していても、法人税の課税所得を計算するときに加算調整する場合があります。 9
例として、会計利益が500,000AEDで、その利益に罰金3,000AEDの費用計上が含まれているケースを考えます。他の税務調整がなければ、罰金を加算して課税所得は503,000AED。通常法人税は11,520AEDになります。罰金を控除できると誤解して計算した11,250AEDとは、270AEDの差が出ます。

注意|270AEDは、罰金に別の税金が直接かかるという意味ではありません。 罰金を経費にできると思い込んだ試算と、正しく加算調整した試算との差です。罰金そのものの3,000AEDは別に支払っています。
法33条では、損害や契約違反に対する賠償金は、この「罰金・ペナルティ」の除外規定の例外に位置付けられています。ただし、賠償金なら自動で全額損金になるという意味ではなく、事業関連性などの一般的な控除条件も確認します。 9
取引先の接待費も、何でも全額控除できるわけではありません。法人税法32条では、顧客や仕入先などをもてなす飲食・宿泊・交通等の接待費について、原則50%の控除制限があります。法人税で費用を控除できるかと、VATを控除できるかは別に判断します。 9
ドバイの生活ルールは、金額より「適用条件」を押さえる
服装や公共の場での振る舞いは、施設と場面を意識すると理解しやすくなります。モールや宗教施設では控えめな服装を選び、水着はビーチやプールなどの場所に限ります。一般の場所で女性に頭を覆うことが一律に求められるわけではありませんが、モスクでは施設の服装ルールに従います。 10
公共の場での親密な愛情表現や、侮辱的な言葉・ジェスチャーにも注意が必要です。文化への配慮と法的な禁止を同じ「なんとなくのマナー」と捉えず、場所の案内と政府ガイドを判断の軸にします。 10
メトロでは「禁止されている場所」がポイント
RTAの公式一覧には、次のような罰金が掲載されています。金額だけを覚えるより、対象となる行為と場所をセットにしましょう。 11
| RTA公式一覧の違反区分 | 掲載されている罰金 | 防ぐための確認 |
|---|---|---|
| 飲食が禁止されている場所での飲食 | 100AED | 車内・駅の表示を確認し、飲食可能な場所を使う |
| 特定の利用者向けに指定された区域への進入・着席 | 100AED | Gold Classや女性・子ども用区域などの区分を確認 |
| 旅客シェルターや睡眠が禁止されている場所での睡眠 | 300AED | 待合・休憩場所の規則を確認する |
「メトロでうとうとすれば、どの場所でも必ず300AED」と一律に広げるのは適切ではありません。公式の違反文言は、旅客シェルターや睡眠禁止場所を対象にしています。また、指定区域への進入と有効な乗車券・運賃の違反は、別の区分です。 11
写真・動画・SNSは、撮影と公開を分けて考える
UAE政府は、本人の許可なく人を撮影しないこと、特定の政府施設や軍事施設を撮影しないことを案内しています。店内や建物にも独自の撮影規則があります。風景を撮りたいときも、人を大きく写す前には同意を得るようにします。 10
撮影に同意があっても、写真や会話をSNSで公開することまで許可されたとは限りません。サイバー犯罪法43・44条は、オンラインの侮辱・名誉毀損や、同意のないプライバシー侵害などを規定しています。内容が事実でも、相手を害する目的での公開が法的な問題になる場合があります。 12
契約やサービスで揉めた際は、相手を侮辱する投稿で解決を図るより、契約、請求書、自分が受け取った連絡を整理し、正式な窓口で対応します。顧客や従業員の個人情報を、説明のために無断で公開しないことも大切です。
移住・事業開始の前に整える4つの手順
税務と法務を別々に後回しにすると、設立後に帳簿や契約を作り直すことになりかねません。最初に事業と生活の立場を整理し、その結果に合わせて登録と運用を準備します。

- 事業と居住の立場を整理する。 会社員、個人事業、法人のどれに当たるかを分け、顧客と仕入先の所在地、海外サービスや輸入の有無を一覧にします。日本に住居・家族・仕事が残る場合は、日本側の税務上の居住者判定も整理します。
- 必要な登録と契約をそろえる。 活動に合う事業ライセンス、法人税・VATの登録要否、VISA、銀行口座を確認します。取引契約には、業務範囲、料金、税の扱い、支払条件を明記します。
- 帳簿と証憑を月ごとに残す。 売上と仕入れ、私的な支出、接待費、罰金を分けます。国外サービス・輸入物品の書類と、必要な仕入先確認の記録を保管します。
- 申告と見直しの期限を管理する。 VATは通常期末後28日、法人税は通常期末後9か月を目安に申告・納付の予定を作ります。法人税の関連記録は原則7年間保存します。 5・9
日本の税務上の「住所」は、生活の本拠を客観的な事実から判定します。国外転出届やUAEのVISAがあることだけで、日本側の課税関係がすべて解消するわけではありません。国内源泉所得や海外法人に関わる論点も、事業の状況に応じて整理する必要があります。 13
所得税・法人税・VATの制度全体を詳しく整理したい方は、ドバイの税金の解説もあわせて読むと、今回の取引や経費の判断を理解しやすくなります。
MDSなら、法人設立後の会計税務と法務もまとめて考えられる
ドバイで事業を始める際は、会社を作れるかだけでなく、設立後に誰が会計・税務・契約まで担当するのかを見て支援先を選ぶと、運用の違いが分かりやすくなります。
MDSは、公式サイトで上場企業も多数担当すると公表し、海外進出ページに法務・監査・会計税務の政府公認ライセンス番号を掲載しています。公表番号は、法務4425597.01、監査1156708、会計税務1805330.01です。大手企業向け支援の経験と、会計税務・法務を扱う体制が、比較する際のポイントになります。 14
また、MDS公式サイトは、自社サービスとして「MDS法律事務所」と国際法律チームを紹介しています。法人設立だけでなく、設立後のVISA、会計処理、銀行口座、法務まで一括で支援することを案内しており、国外仕入れのVATと契約条件を一緒に整理したい事業者にも、相談の入口になります。 14・15
相談前に整理したいこと|予定する事業、年間売上、主な顧客の国、海外サービス・輸入の有無、日本側の生活と会社の状況を伝えると、必要な登録・帳簿・法務対応を具体的に検討しやすくなります。
税率の低さだけで設立方法を決めず、取引が始まってからの会計・申告と、生活や契約のルールまでつながる体制を整える。そのための選択肢として、MDSの海外進出サポートを確認してみてください。
よくある質問
ドバイで給与の所得税がなくても、VATは払う?
はい。給与に対するUAEの個人所得税と、物品・サービスにかかるVATは別制度です。標準税率の対象となる買い物には原則5%のVATがあります。 1
国外仕入れのVATが差引0なら、申告しなくてよい?
いいえ。リバースチャージの申告と仕入控除を同じ期間に計上し、結果として差引0になる場合があります。非課税や申告不要とは異なります。 5・6
仕事中に発生した罰金なら、会社の経費にできる?
会計上の費用計上と税務上の損金算入は別です。法人税法33条では罰金・ペナルティは原則損金不算入なので、課税所得の計算で加算調整を確認します。 9
フリーゾーン法人ならVATの検討は不要?
いいえ。適格フリーゾーン法人の法人税優遇と、VATの登録・課税・控除は別に判断します。フリーゾーンという名称だけで国外取引やVATを一括で非課税にしないようにします。 4・8
出典・注釈
制度・公式掲載内容の確認日:2026年10月16日。税額例は記載した前提でのモデル計算です。罰金は違反区分と適用条件で決まり、表はRTA掲載区分の抜粋です。MDSの実績・サービス体制・ライセンス番号は同社公式の公表内容に基づきます。
- UAE政府:個人所得税・VAT・法人税の概要
- UAE政府:法人税の対象と通常税率
- FTA:自然人の法人税対象と除外所得
- FTA:適格フリーゾーン法人と適格所得
- FTA:VAT申告ガイド・国外取引・申告期限
- KPMG:海外役務のリバースチャージとVAT控除書類
- EY:仕入VAT控除に関する取引確認要件
- FTA:VAT登録義務の金額基準
- UAE法人税法:32・33条の費用、48・53条の申告納付、56条の記録保存
- UAE政府:服装・公共の行動・撮影のガイド
- RTA:ドバイメトロの規則と罰金一覧
- UAEサイバー犯罪法:43条の侮辱等、44条のプライバシー侵害
- 国税庁:居住者と非居住者の区分
- MDS:海外進出支援・公表ライセンス番号・企業支援の紹介
- MDS:法律事務所と国際会計・監査のサービス紹介